ご挨拶

ご挨拶

  前任の坪井康次先生から陽子線医学利用研究センター長の任を引き継がせていただきました。
35年の歴史を持つ当センターは、将来の治療継続に関わる非常に重要な時期に差し掛かっています。世界に先駆けて新しい治療法を確立していった18年間の高エネ時代に続き、呼吸で動く臓器のがん治療実績を継続的に積み上げ、小児のがん治療など、副作用を抑えられる陽子線治療の特徴を発揮した治療実績を得た、病院併設の現施設の利用も17年を超えています。装置の老朽化による問題が、この数年で顕在化してくると考えられます。次の時代をどう構築するか、研究の戦略をどこにもってくるか、大事な課題が残されており、待ったなしの状況でもあります。
  筑波大学の陽子線治療の強みは何か聞かれることがあります。ここに簡単にまとめておこうと思います。過去の広報は十分ではなかったものの、先進的な治療の実践は特徴のひとつです。しかも30年の実績があります。呼吸で動く臓器に対する照射の開発、呼吸で動くエックス線透視画像による照射位置合わせなどです。現在では、あたりまえになっているこれらの技術が、長年にわたって続けられてきており、積み上げられた臨床実績に直結しています。粒子線固有の標的の広げ方、動く臓器への小照射野の重ね合わせに生じる線量分布の歪の問題など、当センターから発信された概念は、当初多くの研究者が理解できず情報としては埋もれてしまいましたが、15年以上たって、新しいスキャンニング照射技術の中で頻繁に議論されるようになっています。これらの治療の実践が、現場の治療スタッフの手技、課題解決力を増強してきています。このため、同等の手続きであれば、照射準備、照射にかかる時間は、世界のどの施設と比較しても当センターが短く、作業が効率的です。チーム連携、多職種連携、患者とのコミュニケーションなど、治療現場の人の動きに関連する連携は、当センターの強みです。長年に渡る陽子線治療の臨床実績は、病院内、周辺あるいは全国の医師との連携が基礎となっています。患者様を紹介していただける多くのチャンネルを持っていることも、当センターの強みと言えます。放射線腫瘍学、医学物理学、放射線生物学の3つの研究グループの協力体制が出来上がっていることも特徴です。このおかげで、陽子線治療に関する専門職種の教育を以前から実施しており、医師、医学物理士、診療放射線技師の研修生を数多く受け入れてきました。イギリス、ドイツ、オーストラリア、中国、台湾などからの研修生も受け入れており、今後、国際的な教育拠点になるべく英語によるトレーニングコースを更に充実すべきと考えています。
  当センターの研究戦略の柱のひとつはホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の新しい装置を開発することです。当センター内に、中性子捕捉療法研究開発部門(部門長:松村明先生)と、中性子医学研究開発室(室長:熊田博明先生)を置いており、茨城県、高エネルギー加速器研究機構の協力のもと加速器駆動型の装置開発と臨床研究を推進しています。大学院修士課程、博士課程に入学する学生のうち、半分以上がこの新しい研究テーマを選択しており、大学内外の関心の高さがわかります。また、粒子線治療技術研究における戦略的テーマとして照沼利之先生が、マーカーレストラッキング技術の開発を行っています。この研究は、これまでにない発想で多層ニューラルネットワークを利用し、X線透視画像上で見えにくい標的(がん)や、隠れている標的を実時間で追尾するというもので、新世代の粒子線治療での利用を目指しています。世の中のディープラーニング、AIへの関心の高さもあり、この分野での利用に限らず、今後重要になっていくと考えられる新しい技術です。
  当センターの強みを活かし、戦略的研究テーマを次の世代の装置に繋げていくために何ができるのかを、全メンバーといっしょに考えることが、今やるべきことであると考えます。連携いただいている多くの病院、研究施設の皆様との協力体制も続けさせていただき、この分野の新しい方向性を見極めていきたいと考えています。今後もご協力いただけます様お願いいたします。


筑波大学附属病院

陽子線医学利用研究センター長

榮 武二

センター長プロフィール

経歴

1983年
九州大学大学院卒業

2018年 4月
筑波大学附属病院
陽子線医学利用研究センター長に就任

榮 武二 Takeji Sakae

榮 武二
Takeji Sakae

工学博士
第1種放射線取扱主任者

その他関係学会

応用物理学会、電気学会、日本医学物理学会、日本医学放射線物理学会、日本原子力学会、日本物理学会

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