陽子線治療について

陽子線治療とは

 

01 陽子線治療は放射線療法のひとつです。

がんの治療法は、外科手術、化学療法、放射線療法が三大治療法と言われています。

陽子線治療は、この中の放射線療法の一つです。
従来の放射線治療では、エックス線やガンマ線といった光子線を使用しますが、陽子線治療は、水素の原子核(陽子)を加速してエネルギーを高めてできる陽子線を治療に使います。陽子線治療は陽子線が持つその物理的特性によって、治療効果が高く、体への負担や副作用が軽い、という点で注目されています。

 

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02 陽子線治療は病巣のみにピンポイントで放射線を照射します。

エックス線などの放射線は、体の表面近くでいちばん強い効果があり、体の奥へ入るにしたがって効果が弱くなり、病巣を超えて体を突き抜けてしまいます。そのため、病巣の奥にある正常な組織や臓器を傷つけることが避けられませんでした。
しかし、陽子線は、「設定した深さに到達したときに最大のエネルギーを放出して停止する」という物理的特性を持っています。病巣のある深さに合わせて陽子線の照射を設定すれば、その病巣にあたった時点で最大の効果を発揮して停止し、奥までは突き抜けないのです。一人ひとりの患者さんに最適な照射を計画することで、腫瘍をピンポイントでくり抜くように治療することができ、同時に正常な組織への影響を少なくすることができるという利点があります。

 

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「設定した深さに到達したときに最大の効果を発揮する」という性質はブラッグピークと呼ばれます。陽子線治療では、このブラッグピークをがんの病巣の位置や大きさに合わせて設定します。従来の放射線治療より、腫瘍に集中して照射ができるため、高い治療効果が得られます。

体内における照射イメージ

従来のエックス線治療では、病巣を突き抜けてしまうため、病巣だけでなく、心臓や肺なども照射されてしまいます。陽子線治療では、ブラッグピークを病巣に設定すれば、そこで停止するため、周辺の正常臓器への影響は少なくなります。

 

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03 体への負担が少なく、QOLを保つことができる治療法です。

陽子線治療は、がん細胞のみを狙い撃ちできるため、他の正常な細胞へのダメージが小さく、従来の放射線治療と比較すると副作用が軽くすみます。体への負担や、治療後の社会復帰に支障をきたすことが少なく、QOL(生活の質)を保つことができます。また、治療期間中は原則として入院する必要はなく、通院での治療となります。

陽子線治療のメリット

  • がん病巣のみに、ピンポイントで高いエネルギーで照射できるため、優れた治療効果が期待できる。
  • 放射線の影響をうけやすい臓器の副作用を減らしがん病巣を的確に治療することができる。
  • 体への負担が少ないため、高齢者や体力のない人にも治療を施せる。
  • 小児や若年者では、放射線治療を受けた後の二次がんの発生を低く抑えることができる。
  • 合併症があるために手術ができない人も治療を受けられる。
  • 入院の必要がなく、毎日の通院で治療を受けられる。
  • 治療後の社会復帰や日常生活への支障をきたすことが少なく、高いQOLを維持できる。

陽子線の副作用

陽子線治療は、従来の放射線と比較すると正常な組織への影響が少ないため副作用を軽減することができます。ただ副作用がまったくないとは言えず、たとえば、照射した部位の皮膚に日焼けのような症状がみられることなどがあります。また、治療後の副作用は、病巣の部位や陽子線の照射角度によってそれぞれ異なります。治療時には、専門医より詳しく説明いたしますので、よく理解したうえで治療を受けるようにしましょう。

 

 

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