陽子線治療とは
陽子線に期待される高い治療効果
がん治療は、手術・抗がん剤治療・放射線治療の三本柱を中心に進歩してきました。この中の放射線治療は、放射線を病変にあて、がんを小さくしたり死滅させたりする治療法です。従来はX線やγ線が用いられてきましたが、近年は陽子線や重粒子線なども使われるようになりました。
なかでも、陽子線治療では、水素の原子核である陽子を加速器で加速させ、ビーム状にして体内に照射します。X線などとは物理的な性質が異なり、体内のがん細胞にエネルギーを集中させることが可能なため、高い治療効果と体への影響の少なさが注目されています。

病巣にピンポイントで照射
現在も放射線治療の主流はX線です。X線は、体の表面近くでもっとも線量が多く、体内へ進むにつれて線量が減少していく特性があり、病巣付近の正常な組織にも影響を与えてしまいます。
一方陽子線は、「設定した深さに到達したときに最大の効果を発揮し、停止する」という性質(ブラッグピーク)があります。この特性を活かし、病巣の深さに合わせて集中的に照射し、正常な組織への影響を軽減することが可能です。



スポットスキャニング照射で高い精度を実現
陽子線の照射にはいくつかの方式があり、当センターでは「スポットスキャニング照射法」を採用しています。これは、細く絞った陽子線を一点ずつ病巣に照射していく方法です。まず、立体的に病巣をとらえたCT画像で、病巣を層状に分割します。このデータをもとに、層ごとに高速でスポット照射を繰り返していきます。複雑な形状の病巣にも高い精度で対応でき、治療の安全性と効果がさらに高まりました。

陽子線治療のメリット
- 優れた治療効果
がん病巣のみに、ピンポイントで高いエネルギーで照射できるため、優れた治療効果が期待できます。 - 入院の必要がありません
多くの方が毎日の通院で治療を受けられます。1回の治療時間は15~30分程度ですので、治療後もそのまま帰宅できます。 - 生活の質(QOL)の向上に貢献
治療前とほとんど変わらない日常生活を続けられることが多く、高いQOLが維持できます。 - 手術が難しい人にも対応
体への負担が少ないため、高齢者や体力のない方、合併症がある方でも治療が可能です。 - 二次がん発生リスクの抑制
正常組織への照射を最小限に抑えられるため、将来のがん発生リスクが低減できます。小児や若年者にも有効な治療法です。
陽子線の副作用
陽子線治療は、従来の放射線治療に比べて体への負担の少ない治療法ですが、副作用がまったくないわけではありません。照射部位や線量、患者さんの体質によって異なりますが、照射部位の日焼けのような炎症や、照射臓器の炎症症状、粘膜炎、脱毛、浮腫(むくみ)、などが出る場合もあります。治療の前には必ず専門医から説明がありますので、よく理解して治療を検討してください。
