陽子線治療の流れ
実際に陽子線治療を受ける際の、おおまかな流れをご紹介いたします。
陽子線治療は、病巣に正確に陽子線を照射するために、治療計画を立てたり、体を固定する器具や照射器具の作成など、患者さん一人ひとりに合わせた準備が必要となります。
01 初診診察
患者さんが十分納得できるよう病状や治療法をわかりやすく解説します。
お持ちいただいた紹介状や画像データ、診察などによって病巣や全身状態を把握し、陽子線治療が最適かどうか検討します。初診日は、診察と必要に応じて検査の手配をします。診察の際は患者さんとじっくりと対話。病状や治療法についてわかりやすく解説するとともに、患者さんの状況などもよく聞いて、総合的に判断します。また、病状によっては、陽子線治療をお勧めしない場合もあります。
陽子線治療を受けることが決まったら、治療開始のための準備にとりかかります。準備期間中、2回程度通院していただき、準備にご協力いただきます。
02 固定具の作成
陽子線照射中に、患者さんの体が動いて照射位置がずれてしまわないよう、一人ひとりの体の形に合わせた専用の固定具を作ります。固定具の作成にかかる時間はわずか1~2分です。
03 固定具をつけてCT撮影
固定具が完成したら、実際に患者さんに固定具を装着していただき、治療計画立案に使用するためのCT画像を撮影します。
04 治療計画の作成
2-3-1 治療計画の立案
担当医と医学物理士によって、患者さんの病状に合わせて、コンピュータを使って陽子線を照射する角度、深さ、量、回数などを計算し、具体的かつ綿密な治療計画を立てます。
2-3-2 カンファレンスによって治療計画を検討
治療計画が立案されたら、担当医や他の医師、医学物理士、放射線技師、看護師らとともに、カンファレンスを行い、治療計画が的確かどうか参加者全員で討議、チェックします。また、治療中の患者さんの治療計画の更新や新規の患者さんの病状などについても情報共有します。カンファレンスは毎朝行っています。
毎朝カンファレンスを実施。各患者の治療プランや治療経過を医師全員でチェックし、情報共有しています。
病巣の状態に合わせて担当医と医学物理士が治療計画を立てる。照射する線量や回数などを詳細に決定。
05 照射器具の作成
陽子線が正しく病巣のみに照射されるように、照射の形と奥行きを形成する「コリメータ」と「ボーラス」と呼ばれる2つの照射器具を、患者さんの病巣に合わせて作成します。
06 陽子線の照射量の測定
照射制御室では、診療放射線技師たちが陽子線の線量の調整や正常に照射されているかどうかをチェックしています。
専用の装置に、コリメータとボーラスをセットし陽子線を照射して量と分布を測定します。測定結果と治療計画に違いがないかどうか確認し、万全の準備が整った段階で実際の治療へと進みます。
07 治療開始
いよいよ陽子線治療が始まります。
治療期間中は、月曜から金曜*1まで毎日通院して陽子線の照射を受けます。
照射する回数や期間は、患者さん一人ひとりの病状によって異なります。
*1メンテナンス日や祝日を除く
エックス線を使って正しい照射位置を確認
陽子線が正確に照射できるよう、2方向のエックス線撮影を用いて位置を確認します。
陽子線の照射精度を上げるために重要な2つの照射器具を照射口にセット
病巣の形に合わせて陽子線の輪郭を決めるコリメータ(右)と陽子線を病巣の奥行きに合わせるボーラス(左)。この2つの器具を照射口の先にセットします。これらの器具は治療によって病巣が小さくなるたびに作り直します。
筑波大学が開発した呼吸同期照射システムによってより正確に
横隔膜は呼吸によって3~4センチ上下しますが、それに伴って肝臓や肺も上下します。筑波大学では、呼吸の影響を受けず、毎回同じ位置に照射できるように、呼吸同期照射システムを開発。 レーザーセンサーを患者さんの腹部にあて、動きを感知してタイミングをはかり決められた位置でのみ、陽子線が照射されます。
治療時間は15~30分
照射中は、痛みなどは感じません。照射自体は1回1~3分程度で終わります。位置の確認などを含めると15~30分程度の治療です。
治療後のフォローアップ
陽子線治療が終わった後は、紹介元の主治医と連携をとりながらフォローアップします。3カ月に1度、当センターの外来にて、主治医の元での治療経過や検査の結果について診察いたします。治療後5年間は当センターでも経過観察を行い、陽子線治療の専門医の立場から必要なアドバイスを行います。治療後のご相談やご質問は随時受け付けています。